元小児科医の先生
本の読み方、接し方を勘違いしていたので訂正。
>著者の中で十分な議論がなされていない気がする。
と先日書いたが、どちらかというと著者の経験則をまとめたものであると気付いた。
子育て中にとてもお世話になる永遠の育児書『育児の百科』の著者、らしい。
『私は女性にしか期待しない』を書いた時はすでに82歳。
調べてみるとこの先生は大正の生まれで、90歳でお亡くなりになるまで本を書いている。
亡くなる1年に発行された著書のタイトルが『安楽に死にたい』ってのがなんとも。
私の祖祖母の7歳上くらいの人なのか。つまり、戦争の時に30歳くらい。
そしてこの本が発行されたのが、母親がOLをしていた時代。
小児科医として、多くの女性と話をしてきた経験から、社会現象を俯瞰している。
貝原益軒と福沢諭吉の著書から学んだ江戸時代の日本のしきたり、
そして第二次世界大戦前後から現在まで生じているリベラリズムの様子を、
著者が見てきたこと、聴いたことを中心に、ありありと書いている。
30歳そこらの人が好き勝手に書いている本とは全く違うことにやっと気付いた。
読み始めは、医者というある種の特権階級から、俗世で流行っているものに関して、少しペンを走らせて、中身の薄い本を量産している人々を思い出して、構えてしまった。アンチマスメディアの姿勢や、企業を悪とする考え方も過激で、彼らを彷彿とさせた。どうやってこれを論破してやろうか、と燃えたほどだった。
しかし、読み進めていくうちに、子どもに対する母親や学校教育に関しては著者の一貫した哲学が感じられた。よく考えられていて、根拠がある。
新しい社会規範の可能性
- Ⅰ しきたりの力
- Ⅱ 企業の力
Ⅰは3つの文献からの考察・知見がメイン、
Ⅱは小児科医という立場から、企業を眺めている印象。
根拠が弱く一貫性に欠けている場所もしばしば。
ただし、「しきたりの力」はとても面白い社会規範なのでFollowすると面白い概念かもしれない。
これを一つの先行研究として、根拠をつめたら、
現代日本社会をきる新しい一つの概念になるかもしれない。
そういえば私は1回生の頃、新しい社会規範を発見したい、と思っていた。
良いかもしれない。
読み応えがある点
- Ⅲ男のしていること
- Ⅳ女のたたかい
これらは著者が見たこと聴いたことが中心で、根拠と一貫性がある。
時代の変化に伴う家族の変遷については恐ろしいほど鋭く、
20年後の現在、著者の予測どおりになっていることもあり驚いている。
アンチマスメディアや、企業社会に対する問題意識も、
戦後の生い立ちから見続けてきたからこそ、
どっぷり浸かっている私が感じないような危機感を感じていたのかな、と思う。
この分野に関しては、著者の予測は外れ、私たちが適応している部分も多い。
なぜ適応できたのかについて調べても面白いかもしれない。
あと3分の1。